【開発ストーリー FCX vol.2 Tyrell 製フォールディングバイクの系譜とFCX】

【開発ストーリー FCX vol.2 】

お正月にアップするべく書き進めていた、開発ストーリーFCX vol.2 ですが、書き直す事数回・・・

今回は製品コンセプトについてお話しするつもりだったのですが、FCXを正確にご理解いただき、お伝えする為には、現在に至る Tyrell 製フォールディングバイクの系譜についてお話する必要が有ると感じ、急遽、内容を変更してvol.2を書き直しました。

今回も長くなりますが、お付き合いくださいね。

【Tyrell 製フォールディングバイクの系譜】

Tyrellのフォールディングバイクは、XF、FSX、FX、IVEと現在4モデルのラインアップ(XFは販売終了しました)が有ります。

FCXは5番目のフォールディングバイクと言う訳です。

Tyrellのフォールディングバイクとして最初に世に出たのが「FX]です。
その後、FXのトータルバランスを継承しつつ、スポーツ性にフォーカスした上位モデルとして、「FSX」が発売されます。

FSX セトシルベルビーレッド、比較対象はロードバイクと言える最強モデル
FX ムーンリットナイトブラック、Tyrellのスタンダードモデル

「FX」も「FSX」も、ロードコンポーネントに完全対応したフォールディングバイクで、他には無い高い走行性能と軽量な車体重量で、現在も高い評価をいただいています。

そこに、全く新しいコンセプトを持った「IVE」が登場します。

それまでの Tyrell のバイクは、「俺を乗りこなしてみろ!」とでも言わんばかりの、どちらかと言うと乗り手に挑みかかるような、スパルタンな性格のバイクでしたが、IVEは「乗り手に寄り添える高性能」を目指して、どんな使い方でも受け入れることが出来る、懐の深いバイクとして開発されました。

IVE パールアイボリー&ダークキャンディーレッド、スポーツ性と汎用性のベストバランス

Tyrell 製フォールディングバイクは、高いスポーツ性が魅力でホイールサイズが20㌅(406)の「FSX」「FX」と、どんな方にも寄り添える高性能が魅力でホイールサイズが18㌅(355)の「IVE」という、2つのコンセプトに大別できると言えます。

XFは、Tyrell ブランド10周年のモニュメントとして、それまで培ってきたフレーム設計技術の集大成ですので、既存の製品ラインアップからは外れた存在です。
僕たちが作ってみたかったバイクを、一切の妥協なく作らせて頂いたモデルですので、話がややこしくなりますから外させて頂きますね。

XF 、世界限定50台のモンスターバイク、フォールディングバイク最強を公言したい!!

【Tyrell 製フォールディングバイクに451ホイールが無い理由】

皆さんご存知だとは思いますが、Tyrell には20㌅(451)のフォールディングバイクがラインアップされていませんね。
今まで、451のフォールディングバイクを作って来なかった事には、明確な理由が有るんです。

それは、451ホイールの良いところと、Tyrell が考えるフォールディングバイクの良いところの相性が悪い、と言う事なんです。

ホイール径が406よりも大きな451は、ホイールの慣性モーメントが406よりも大きく、加速と言うよりもスピードの伸びの良さが魅力です。

その魅力を生かす為には、しなりを使ってスピードに乗っていくようなフレームが必要となります。
振動吸収性に関わるしなりではなく、推進力に変換できるペダル入力に対しての「しなり」の事です。

「FSX」「FX]では、フォールディングバイクの弱点である、フレーム剛性の低さを克服する為に、折り畳みの支点部分や結合部分の強度を高めていますが、その功罪として、フレーム全体の剛性が高目とならざるを得ず、ペダル入力に対してフレームのしなりを作る事が難しいんです。

結果的に高目の剛性を持ったフレームとして自転車をまとめる必要が有るわけですが、それって加速が得意な自転車と言う事になり、「FSX」「FX」では451ホイールとの相性が悪くなってしまいます。

実際にスラントフレームの折り畳みフレーム(アルミ)と451ホイールの組み合わせでテストバイクを制作したこともありますが、可もなく不可もなく面白みが無い自転車となっていました(互いの弱点を、良いところが補い合う)。

Tyrell が求める「emotional」は、其処には有りませんでした。

お互いの長所がシンクロする事で、圧倒的な魅力のあるモデルになる(たとえ弱点が有ったとしても)。
それでなければ、Tyrell の自転車ではないねと・・・それが理由で、Tyrell 製フォールディングバイクには451ホイールのモデルが無かったんです。

それで、5番目のフォールディングモデルは「451ホイール」を使用し、その特性にマッチしたモデルとして、「FCX」が企画されました。

【5番目のフォールディングモデル(FCX)がクロモリ材を使う理由】

ここまで読んでいただくと、「それでFCXは、しなりが出しやすいクロモリフレームを使って451ホイールなのね。」とご理解いただけると思います。
まあ、近からず遠からず・・・正解の様なちょっと違う様な・・・

しなりのあるフレーム、伸びの良さが有るフレームを、フォールディングバイクで実現する為に、クロモリ材でなければ作れないという事は有りません。
カーボン材やアルミ材、チタン材を使っても、製作は可能だと思います(今だから言える、XF以前は難しいと思っていました)。

今回、クロモリ材を使ってフォールディングバイクを作ることになった一番の理由は、XFで学んだことを製品化したいという思いが有ったからです。

XFはフォールディングバイクの限界性能にチャレンジしたバイクで、折り畳み部分の寸法精度を 3/100mm以下にまで高める事で、折り畳み部分の剛性不足や動きの違和感を取り除き、まるで折り畳み部分が存在しないかのような一体感のある走行フィーリングを実現していました。

流石に量産モデルで、 3/100mm以下の寸法精度を求める事は難しいのですが、自社工場でハンドメイドするなら、かなり近い所まで攻めた設計が可能となります。

連結部分の寸法精度 3/100mm以下、魂込めて作りました・・・ふぅ

XFを作っちゃった以上、僕たちのベンチマークはXFなんです・・・
「えらいこっちゃ」です・・・相手は100万円オーバーのモンスターですから。
でも、作れるって分かっちゃったし、乗ってしまいましたから、もう後戻りはできません。

現在、Tyrell ファクトリーで生産できるフレーム素材は、アルミ、クロモリ、ステンレス、チタン、カーボンと、基本的には自転車のフレームで使われるマテリアルはカバー出来るのですが、寸法精度や制作方法など、Tyrell で新しいチャレンジをする為には、術的に確立されているクロモリ材が最適だと考えているんです。

【今までにない走行性能のフォールディングバイク】

そうです。
FCXがクロモリ材を使用する本当の理由は、「今までになかった、XFの様なブッチギリの走行性能」が欲しいからです。

「ほほ~大きく出たね~。」って思ってる人、沢山いるんやろな~って思いつつ、あえて自らのハードルを上げてます~(^^;)

どんな走行性が欲しいかと言いますと、【開発ストーリー FCX vol.1】では下記の様に書かせて頂きました。

◆FCXの開発要件
1.ミニベロの既成概念を超えた安定感のある直進性。
2.ダンシング時のさばきの軽さ。
3.衝撃吸収と反発力の絶妙なバランスポイントの実現。
4.シンプルで研ぎ澄まされた「佇まい」。
5.メイドイン讃岐

先に書きました「ペダル入力に対してしなりが有る事」は、3.に該当する項目としてお考え下さい。
走行性に関しては1~3.が該当しますよね。

これらを評価するときには、比較対象がロードバイクを基準に考えていて、もはやフォールディングバイクが基準ではなく、折り畳まないミニベロでもありません(XFは別ですが・・・)。

FCXは、「ロードバイクからの乗り換えを考えていただけるご提案」として開発しています。

勿論、「絶対的なスピードがロードバイクと比較できる」何て事を言っている訳ではありませんよ。
競技性やスピードを求めない場合、「1日中走っていても楽しくて折りたたむ事も出来る自転車」って考えるだけでワクワクしませんか?

「今までにない、ブッチギリの走行性能」は絶対的なスピードを指すのではなく、そう言う事なんです。
「うまい事言って、逃げっちゃった。」とお思いですか?
でも、これってフォールディングバイクにとって、ものすごく高いハードルなんですよ。

普段ロードバイクにお乗りの方が、フォールディングバイクにお持ちの印象って微妙だと思うんです。
ガチなお話をしてしまうと、FSXですら「今日は折り畳みだから・・・」って思わせてしまう場面は正直あると思います。
一般的なフォールディングバイクと比べれば、そうとう限られた場面だとは思いますが・・・

ホイール径の差、重量の差、フレーム構成の差、これらは抗えない事で、諦めるしかありませんでした。

直進安定性、衝撃吸収性、反発性等々、ロードバイクに肉薄する性能を持つ事。
それだけでは無く、FCXでしか得られない走りの楽しさを付加する事。

例えばですが、ずっとロードバイクやミニベロで楽しんでこられた方が、お年を召される等、様々な理由で所有する自転車を1台だけに絞ろうとした時、迷わずにFCXを選んでいただける。また、選んでよかったと思っていただける。
そんな自転車を、FCXは目指しています。

ロジックとしては、Tyrell がずっと提唱し続けている、折り畳み部分の設計、ロングホイールベース、低重心なのですが、XFの精度では作れませんので、今までの作り方では実現不可能です。
只今、新しいフォールディングシステムと格闘中です。
そして、FCXでしか得られない「走りの楽しさ」とは?

どんどん長くなってしまいますので、この辺りは次回にお話させて頂きますね。

今回は、どうしてクロモリの451ホイールを採用しているのか?、FCXをどんな自転車にしたいのか?、でした。

発表まで後5か月を切った訳ですが・・・頑張ってます!
胃が痛いです・・・
皆様、FCXを是非是非お楽しみに!!