【開発ストーリー FCX vol.3 FCX でしか味わえない走りの楽しさとそのロジック 「しなり」について】

【開発ストーリー FCX vol.3 】

前回の投稿からちょっと時間が経過してしまいました。
FCXの開発ストーリーvol.3、お待たせいたしました。

前回の当ブログ、次回は「FCXでなければ味わえない走りの楽しさ」とは、どの様な物なのか、又、それを実現する為のロジックについてご紹介しますとお約束いたしました。

FCXでは「人車一体の心地よさ」を追求しいて、以前にお伝えした開発要件を評価する際の観点はここにあります。

ちょっとおさらいしますね・・・

◆FCXの開発要件
1.ミニベロの既成概念を超えた安定感のある直進性。
2.ダンシング時のさばきの軽さ。
3.衝撃吸収と反発力の絶妙なバランスポイントの実現。
4.シンプルで研ぎ澄まされた「佇まい」。
5.メイドイン讃岐

もういいよ~(^^;)
って言われそうですね・・・

今回のブログでは、開発要件3.の「衝撃吸収性と反発力の絶妙なバランスポイントの実現」について、掘り下げたいと思います。

前置きがやっぱり長いですね・・・ここからが本題です。
最後までお付き合いくださいね。

◆衝撃吸収性と反発力について

「振動吸収性と反発力の絶妙なバランス」・・・
具体的にはフレームをしならせることで、「乗り心地が良くってペダル入力に対して適度なしなりと反発力があって凄く進む自転車」って事です。

振動吸収性は皆さん良くご存じだと思いますので、今回は「ペダル入力に対するしなり」にフォーカスしてお話しますね。

FCXの走りのイメージとして、「ペダル入力に対して適度なしなりが有って、しなりの反発力を生かしてグイグイと加速して行く・・・」そんな自転車にしたいなと言うのが有ります。

具体的には、ペダル入力の前半部分(入力が高まっていくフェーズ)で適度にしなったフレームが、入力の後半部分(入力が低下してゆくフェーズ)で反発して、ペダル入力との相乗効果で推進力が高まる事を目指しています。

ペダル入力に対して発生する適度な「しなり」の周期が、自転車のリズムを生み出していて、そのリズムに合わせてペダリングが出来ると、びっくりする程に軽やかにスピードに乗せることが出来てしまいます。

自転車の振動特性(反発する周期)って、製品化してしまうと機械的に決まってしまいますから、可変させることは基本的には出来ない部分です(一部のメーカーではアジャストできる物もありますよね、凄いです)。
どれくらいのパワー、どれくらいのケイデンス(毎分のペダル回転数)、どんなペダリングの質に合わせるのか・・・
これらは自転車のキャラクターを決める上で、物凄く大切な事なんです。

Tyrell では「自転車とシンクロする」って言ってますが、FCXでどこを狙ってるかと言うと、普通のサイクリストが気持ちよく走っている時にシンクロするように作っています。大体、ケイデンスでいうと80~70回転くらいです。

この、自転車とシンクロする楽しさって経験してしまうと病み付きになりますよ。
設定している乗り手のレベルが、世界最高峰のプロライダーの自転車では、僕たちがシンクロしていられる時間って何分なんでしょうね(僕は数秒?)・・・

「スピードを求めないなら、ロードバイクで無くっても良くないですか?」
ってご提案が出来る自転車として、FCXを開発していますと前回のブログで書きましたが、その真意は正にこの部分なんです。

速さのみをストイックに追及しているロードバイクを否定するつもりは全くありません。レーシングマシンとしてのロードバイクの在り方は、むしろ大好きです。

でも、ストイックなだけではなくって、幅広い自転車遊びのど真ん中には、「自転車と一体になって駆ける楽しさ」が無ければ駄目だと思うんです。
一定速度でただ走っているだけでも、自転車のリズムに合わせてペダリングする事で、自転車とシンクロする喜びを見つけていただけると・・・FCXをそんな自転車にしたいと思っています。

ペダリングのシンクロ感を出す為には、適度な「しなり」と「反発力」がとても大切なんですよ。

◆「しなり」の有るフォールディングバイクのロジック

一口にフレームをしならせると言っても、その塩梅が難しいです。
フレームを構成するどの部分をどの程度しならせるのか・・・

特にフォールディングバイクでは、折り畳み部分が存在しますので、下手にパイプをしならせると、折り畳み部分が支点になってグニャグニャなフィーリングになってしまい、その難しさは折りたたまない自転車の比ではありません。

折り畳み部分で動いてしまうと、フレームのチューブがしなる事で生まれる「反発力」が得られなくなったり、フレームが特定箇所で折曲がる事で車体の動きがギクシャクしたり・・・

前回のブログで、「今までにない走行性能のフォールディングバイク」とは、「折り畳み部分が悪戯してフレームのしなりが有効に働かない事を解消する。」って意味なんですよ。

それでは、どうやって有効な「しなり」を作るか・・・
FCXでは新しい折り畳み部分の設計を取り入れて、連結箇所の固定力を大幅にアップさせ、チューブのしなりや反発力がしっかりと機能するようにしています。

FCXもFX、FSXと基本的には同じ折り畳み方法なんですが、フレームの連結方法が大きく異なります。シートチューブとシートステーの連結部分、BBとチェーンステーの連結部分には、新しいシステムを採用しました。

シートステー連結部分。固定はスキュアーで行います。

画像を見ていただいて、気付いた方も居られると思いますが、従来のクイックレバーを使った固定方法から、FCXではスキュアーを使用して固定する方法に変更されています。
クルクル回す緩め方ですが、実際には1回転緩めれば十分ですから、クイックレバーと手間は変わらないと思います。
それよりも、固定力が抜群ですのでこの方法を採用しました。

また、画像には無いですが、従来のピン方式から、ワンタッチのセーフティー機能を採用しています。また、チェーンステーの連結部分をIVEと同じスタイルに変更し、ピボット部分の結合力も大幅にアップしています。
Tyrell がFXを発売した時から提唱し続けている、連結部分の剛性アップをさらに高いレベルで実現しているのがFCXなんですよ。

ここまでやって、ようやくフレームの「しなり」を、推進力に変換できる反発力として取り出せるようになったのですが、問題はまだあります・・・

FSX、FX方式の折りたたみ方では、シートチューブから取り外したシートステーを脚にして、折り畳み状態の自立を保っていますが、FCXのシートステーはしなりを活かす為に細いチューブを使用していて、ステー単体で自立の脚と出来る程に強度が有りません。
そこで、シートチューブから取り外したシートステーを、チェーンステーから取り出したキャッチャーで保持して折りたたむ方式を考えました。

チェーンステー連結部分と、シートステーキャッチャー

こうする事で、折りたたんだ際の強度を意識する必要がなくなり、折りたたむことで走行性を犠牲にすることが無くなりました。

その効果は抜群で、まだまだ未完成のテストバイクでも、フレーム全体でペダル入力を受け止め、適度な反発力で応えてくれます。

10kg 近い車体重量にもかかわらず、重さを感じさせないスピードの乗りの良さが有り、そういう意味では、良くできたロードバイクと比較できるレベルだと思っています。
前回のブログで「今までにないブッチギリの走行性能」と言うのは、この部分の事を言っていました。絶対性能ではなく官能性能とでも言いましょうか・・・

シッカリと折りたたむことが出来て、乗り物としてのリアルな走りの味わいを楽しむ事が出来るバイクになったと自負しています。
単純に軽いとか、小さく折り畳めるとか、そういったキャッチーな物はFCXには有りませんが、「確かな走りの良さ」にとことん拘っています。

今回はFCXだけが持つ、ペダリングの楽しさについてお話させて頂きました。
長々とお付き合いありがとうございました!

次回はハンドリングについてお話したいと思います。

ではでは、FCXにご期待くださいね!!