【開発ストーリー FCX編 vol.5 進捗状況のご報告】

皆様こんにちは! いつも当Blogをご覧いただき有難うございます!!
今回は発表が大幅に遅れてしまい、既に出る出る詐欺状態のFCXの進捗状況をご報告させて頂きます。

FCXは昨年の夏ごろまでは、年末には何とか・・・年末には、来春までには何とか・・・と、ズルズルと予定が遅れてしまっている状況です。

新型コロナウイルスによる感染症の影響で、原料や副資材の入手が難しいから始まり、パーツの納期が遅れてしまう、原料の調達ができない等、問題が次々と現れて、開発チームの努力と能力ではどうする事も出来ない所まで追い込まれてしまいました。

それでも、昨年末の見通しでは、販売する製品と同じ部品と同じ作り方でテスト生産する量産試作を、ショップ様向けの試乗車も含めて20台程度、3月末までに用意する方向で進行しておりました。

それが、量産のためのパーツの入手の目途が立たなくなってしまい、手持ちのパーツや、少しずつ入荷しているパーツを工面して、販売する製品と全く同じ車体を1台だけ製作する事で、現状進めております。

FCXは、M/Sサイズ、L/Mサイズの2サイズでスタートする方針で動いておりまして、お客様のサイズ選びの基準となる試乗車が、ショップ様に無い事には始まりません。

試乗車を作ってからご注文を承り、量産が始まる予定だったのですが、それではデリバリーが秋になってしまいかねません。

少しでも早く、お待ちくださっているお客様にお届けするために、1台だけの完成品をうまく運用して、お客様にお試しいただき、ショップ様向けの試乗車と製品の1stロットを同時生産とする予定で動いております。

いつ頃に製品をお届けできるのか、まだまだ不透明なことが多く、この場でその時期をお伝えする事は出来ません。
心待ちにしてくださっているお客様には、お詫びする事しかできず申し訳ない思いで一杯です。
誠に申し訳ございません。

冒頭から、絶望的なお話となってしまいましたが・・・

今回のブログでは現状報告の意味で、制作中の量産試作品をちょい見せさせていただくのと、自社生産のカーボンフォークについてご紹介したいと思います。


上の画像は、FCXのシートステーをシートチューブに固定する、連結部分です。
以前に3D CADのイメージ図でお見せした事がありましたが、これが現物です。

シートステーは左下画像で確認できるレバーがスキュアーボルトになっていて、回転させることで固定と解除ができるようになっています。

安全装置として、ゴム足がついているプレートがセーフティーロックとして機能する設計で、解除は押し下げて行います。

スキュアーのハンドルは右下画像のように引き抜くことで取り外す事が出来るのですが・・・

引き抜いたスキュアーハンドルは、上画像のようにハンドルステムの下に設けたコラムクランプにマウントできるようになっています。

このスキュアーハンドルの先端は4mmのアーレンキーになっているんですが、このアーレンキーを使ってステムのクランプを緩め、ハンドルをターンさせる事が出来るようにしてあります。

普通なら、ステムを緩めてしまうと、フォークをセットしているヘッドベアリングの調整を取り直す必要がありますが、スキュアーハンドルをマウントするパーツはコラムをクランプしていますから、ステムを緩めてもベアリングの調整が狂ってしまう事はありません。

このシステムなら、FXやFSXの様なターンステムを使用しなくても、一般的なステムを使用する事が出来ます(コラムをクランプする固定ボルトの頭が、4mmのキャップボルトである必要があります)。

FX、FSXの様にクイックレバーを使用していませんから、折りたたむ際のひと手間は増えますが、走行性に関する連結部分の結合力という観点では、スキュアーで締め付ける方が圧倒的に高い結合力が得られます。
本格的な走行性を重視して、FCXではこのシステムを採用しました。

リアフレームを折り畳んだ後、スキュアーハンドルを抜いてステムを緩めることでハンドルをターンさせ、その後はコラムクランプに取り付ける事で収まりがよく、工具を取り出す必要もありません。

結構、ナイスアイデア!! って思ってますがどうでしょうか?

上の2枚の画像は、シートステーのシートポスト側の固定部分だけを撮影したものです。
左画像は裏側から見た画像ですが、矢印がさしている黄色いパーツ・・・これが、いい働きをするんです。

以前、このブログでXFで学んだ事を落とし込んで製品開発している事をお伝えしましたが、この部分はその一端です。

XFでは折りたたみの連結部分が、3/100mm以下の精度で作られていました。
そうする事で、折りたたみ自転車にありがちなカクカクしたフレームの剛性不足が起こらないようにしていたのですが、世界限定50台のXFだからできた事で、量産車のFCXでXFと同じ手法は取れません。

で、加工精度を3/100mm以下にはできない代わりに、印が付いた黄色いパーツと本体の間に、薄いステンレスのシムを入れることで、部品の精度をギリギリまで詰めず、むしろ大きめの部品を作っておいてシムでその隙間量を調整することにしました。

シムを調整する組み立ての手間は有りますが、こうすることで量産の加工精度でもXFと同じようなフィーリングを得る事が出来ます。
自社工場で組み立てますから、ここは攻めようと・・・

折りたたみ自転車では、連結部分の結合力がとても大切って、Tyrellではずっと発信し続けていますが、FCXの連結部分の結合力ってほかのモデルとは次元が違うところまで行っちゃっています。

フレームが発生する「しなりを生かした走行性」を大切にしていることは、以前の当ブログでお伝えしましたが、その具体的な方法が今回ご紹介した構造なんですよ。
 

  

上の2枚の画像は、FCXのカーボンフォークのを製造している途中を撮影したものです。
左が成形前、右が成形後の画像です。
右はプリプレグをシリコンの芯材に張り付けてから、芯材を取り除いたもので、フォークレッグからビニール袋みたいなのが出ていますが、これが内側から圧力をかけてプリプレグを金型に押し付ける働きをしてくれるんですよ。



 

上の2枚の画像がカーボン製品を成形するオートクレーブです。
Tyrellのファクトリーには2基のオートクレーブ窯があります。

温度をどれくらいの時間で上げていき、どれくらいの時間キープして、どれくらいの時間で温度を下げるのか、コンピューター制御で非常に細かく温度管理ができます。
それだけではなくって、成形する製品の内側には大気圧よりも高い圧力(3気圧程度)を掛け、製品の外側は真空にする事が出来ます。
そうする事で、カーボン製品を強い力で金型に押し付ける事が出来、固く締まったカーボン製品を成形することができます。

オートクレーブは、カーボン製品を成形する方法の中で最も高品質な製品が作れる言われていますが、大量生産には向かない事から、自転車業界(スポーツ用品などの民生品)でオートクレーブで作られているカーボン製品は極小数なんですよ。

一般的なカーボン製のフォークやシートポスト、ハンドル、フレーム等など、お互いを軽くぶつけると、どんな音が出るでしょうか?

コンコンって音が出たらかなり良い方で、下手をするとポコポコって音が出るものも有ったりします。
Tyrellのカーボンフォークはカンカン、場所によってはキンキンってものすごく高い音が出ます。
それだけ固く締まった成形が出来ている証拠です。

勿論、音だけでカーボン製品を評価する事は出来ませんが、カーボン繊維の引張強度よりも、カーボン繊維と樹脂の比率を保って、固く焼き絞めることが最も大切な要素です。
その為に、Tyrellでは手間を惜しまずオートクレーブ製法でカーボン製品を作っています。

理想の自転車を求める設計において、カーボンフォークを自分たちで作れるという事は、フレーム設計の自由度が無限になると言っても言い過ぎではないと言えるアドバンテージです。
それが、ようやく可能となりました。

FCXが他では味わう事が出来ない走りの良さ(速さいという意味ではないですよ)を深く追及する事が出来た一番の要素は、カーボンフォークを自社で作れる事でした。

この辺りは、改めて次の機会にお話しさせていただきたいと思います。

今回は、FCXの進行状況のご報告でした。
FCXを楽しみにして下さっている皆様、大変申し訳ございませんが、もう少しお時間を下さい。

ではでは、今回も長い文書にお付き合いいただきありがとうございました。