【開発ストーリー IVE編 vol.3 もう一つのIVE】 IVEsportsのご紹介

いつも当ブログをご覧くださり、ありがとうございます。
前回の開発ストーリ IVE編 vol.1、vol.2から随分時間が経ってしまいました・・・
IVEのカスタム性能についてお話しするお約束だったのに、申し訳ありません。

さて、今回は表題の通り、「IVEsports(イヴスポーツ)」について書かせて頂きます。
「IVEのカスタム性能ではないの?」と言われそうですが・・・(^^;)。

ご存じの方も多いと思いますが、今回ご紹介する「IVEsports」は、「IVE」と同じフレームを使用している「IVE」の派生モデルです。
ある意味、「IVE」の生みの親であるTyrellがカスタムした自転車と言えるかもしれません。
という事で、「IVE」のカスタム性能のお話と合わせて、「IVEsports」のご紹介をする事にしました。
今回も長いですが、最後までお付き合いくださいね。

◆IVEsportsって、どんなモデル?

「IVEsports」についてお話しする前に、ベースモデルである「IVE(イヴ)」についておさらいさせて下さい。

「IVE」は小径ホイールの自転車に不慣れな方や、自転車に乗るテクニックに不安が有る方でも、安心してサイクリングを楽しむ事が出来る「乗り手に寄り添う為の高性能」を持った自転車です。

詳しくは、前回、前々回のブログをご覧下さいね。

IVEstd(ヘイジーブルー&グロスブラック)シマノSORA 1x8speed

【開発ストーリー IVE編 vol.1 寄り添うための高性能】 – Tyrell Factory Blog (tyrellbike.com)

【開発ストーリー IVE編 vol.2 寄り添う為の高性能Ⅱ 】 – Tyrell Factory Blog (tyrellbike.com

「安心して走る事が出来る自転車とはどんな自転車なのか」を深く掘り下げて開発された自転車が「IVE」です。
そんなIVEが大切にしている「乗り易さ」や「安心感」と、スポーツ性って相反する事のようにも感じますね。

「IVE」が求める「乗り手に寄り添う為の高性能」を実現する為に必要なフレームの設計要件が、高いスポーツ性を求める自転車に必要な設計要件と実は大差なくって、違っているのはその匙加減である事は前回のブログでもお話しさせて頂きました。

のんびりサイクリングでも、スポーツライディングでも、大切なのは「信頼できる走行性能」という事なんですね。
 
そんな理由で、「IVE」のフレームは、高性能スポーツバイクと変わらない設計要件で作られています。
「IVE」はポジションやタイヤ等の、取り付けるパーツのセッティングをスポーツ寄りに変更する事で、かわいい外観からは想像が出来ないほど良く走る自転車に変貌するんですよ。
フレームの絶対的なパフォーマンスが高い事が、IVEを優れたスポーツバイクに仕立てる事を可能にしています。

もうお分かりですよね!
そのIVEが秘めているスポーツ性にフォーカスして、生みの親であるTyrellがチューンナップしたモデルが「IVEsports」なんですよ。

◆IVEsportsが求めるスポーツ性について

Tyrellのフォールディングバイクには、「FSX」「FX」「FXα」といったスポーツ性にフォーカスしたフォールディングバイクがラインアップしています。
「IVEsports」も、これ等の先輩モデルと同一線上のスポーツモデルなんでしょうか?

答えから言ってしまうと、「全く違うコンセプトのスポーツ性」と言うのが正解です。
ご説明してまいりますね。

「FSX」「FX」は、高い軽量性、高いフレーム剛性等を実現する為に、シンプルに目的に特化する手法で、他には無い高性能を特徴としています。
その功罪として、泥除けのご用意が無かったり、キャリア(荷台)のご用意が無かったり、折り畳みの手順が少々多かったりと、抜群の走行性能と引き換えに、日常の利便性を犠牲にしている部分もあります。

「IVEsports」は、ベースモデルの「IVE」が持っている高い利便性はそのままで、スポーツ性を高めたモデル。
泥除けのご用意もキャリアのご用意もありますし、簡単な折り畳み方法とコンパクトな折り畳みサイズも、ベースモデルの「IVE」と全く同じ。
「IVE」で出来る事は全部「IVEsports」でも可能です。

「IVEsports」は「利便性はあきらめたくないけれど、そこそこ走るスポーツ性も欲しい。」と言う、欲張りなモデル。
利便性とスポーツ性が絶妙にバランスしており、「ちょうどイイ!」って言いたくなってしまいます(どこかで聞いたキャッチフレーズですね・・・)。

◆「FXα」と「IVEsports」、どちらを選べば良いの?

Tyrellには「IVEsports」と同じ価格帯に「FXα(エフエックスアルファ)」と言うモデルが有ります。
どちらもスポーツ性を得意にしているので、その違いが分かり難いです。
ご説明いたしますね。

「IVEsports」「FXα」どちらも、フロントギアが1段、リアが9段変速の、1×9速のシマノSORAを装備しており、使用しているパーツの性能差はほとんどありません。
「フレームの違いだけなら、走行性の差ってそんなに有るの?」そんなお声が聞こえてきそうです。


FXαの情報はこちら

実際に走行性だけで比較すると、「FXα」と「IVEsports」に大きな差はありません。少しだけ「FXα」の方が軽量な分で良く走るといった印象です。
では、この2つのモデルをどんな基準で選べばよいのでしょうか?

ポイントは走行性能の余力を取るのか、便利に使える多機能の余力を取るのかです。

「FXα」は上位モデル「FX」とフレームが共通で、フロントギアをダブルにする事が出来るので、峠を超えて山の向こう側まで出かけるサイクリングや、100kmを超えるようなロングライドに対応できる自転車にカスタマイズできる余力が有ります。
上位グレードのロードコンポーネントにも対応出来たり、ドロップハンドルにする事も可能で、シマノ製ロードコンポを使用して、Tyrellの正規ディーラー様でカスタマイズされるなら、メーカー保証が外れないと言ったメリットも御座います(詳細はTyrellディーラー様にご相談くださいね)。
FXαは本格的なサイクリングが可能な自転車に、仕立て直すことが可能なんです。

一方、「IVEsports」は「IVE」とフレームを共通としており、フロントギアをダブルにする事が出来ません。
フレームの設計自体が、峠を越える様なサイクリングや100kmを越える様なロングライドを想定していないんです。
それとは引き換えに、泥除けが取り付けられたり、キャリアを取り付けて荷物を沢山積んだり、手軽に折り畳んで日常的に輪行を楽しむことが出来る、高い利便性を持っています。

どちらも、ご購入時の標準状態なら走行性に大差はないのですが、本格的なサイクリングにも将来チャレンジしたいなら「FXα」、比較的近距離のサイクリングや、日常の使い勝手を大切にされたいのであれば「IVEsports」がベストパートナーだと思いますよ。

◆「IVE」と「IVEsports」はどこが違っているのか。

「ちょうどイイ! スポーツ性」が特徴の「IVEsports」は、ベースモデルの「IVE」とどこが違っているのでしょうか?
ご説明してまいりますよ。

まず、Tyrellが手を入れる訳ですから、普通に販売しているパーツを取り付けて終了って訳にはまいりません。
生みの親ならではの、簡単には手を付けられない箇所を中心にカスタマイズする事を心掛けました。

ハンドルポスト&シートポスト
 
約40mmハンドルポジションを前方に移動する事で、スポーティーなポジションが得られるハンドルポスト、軽量化のために切削加工を内側にも入れた軽量シートポスト。 前後で約250gの軽量化。

標準品よりも軽量、高剛性なリムを採用したホイール&幅の細いスポーツタイヤ SCHWALBE KOJAK

細めのタイヤサイズに最適化したリム幅のホイールは、標準タイプよりも剛性が高く軽量。
乗り心地とスポーツ性に定評が有る、SCHWALBE KOJAK 32-355と合計で350gの軽量化。

乗り心地の向上だけでなく、反発力が得られるリアウェイブショック

松村鋼機 様とのコラボによって生まれた「リアウェイブショック」
固さは標準品と同等としながら、標準品のエラストマーから機械式のばねとなる事で、乗り心地と反発力がアップ

シマノ SORA 9speed を採用したコンポーネント
 
メインコンポをシマノCLARIS 1x8speed から、シマノSORA 1x9speedに
グレードアップ。

「IVEsports」で求めたスポーツ性は、標準仕様の「IVE(以下IVEstd)」の優しい乗り味をベースにしていながら、キレの良さを加味したかったんですね。

「IVE」のフレームなら、細いタイヤに変更したり剛性の高いホイールにすれば、キレの良さは簡単に得られます。
でも、それでは芸が有りません。

上記しているパーツが変更されている訳ですが、ハンドルポストやシートポストが軽量化されていますよね。
これって、単純に重量を軽くしたかっただけでは無いんです。

車体の重心から遠い場所(高い場所)を軽量化する事で、「動きが軽くなる。」のは皆様ご理解いただけると思います。
「動きが軽くなる。」って、動かすのが軽くなるという事は勿論なのですが、それだけではありません。
動いている状態からピタっと静止させることも、軽い操作で決まるようになります。

重いバットでフルスイングしたら、途中でピタっと止められないですよね。
でも、軽いパイプなら結構簡単にピタっと止まると思います。
軽い方が勢いが付き難いって事ですよね。

自転車に置き換えた時も、車体の動き出しが軽い事も重要なんですが、動きだした車体の動きがピタッと決まる事もとても大切です。

車体の重心から遠い部分の軽量化って、スポーツ性を高めると同時に、「乗り易さ」にも作用するという事なんです。

例えばですが、カーブで自転車が傾き始めた時、その傾きに反応してハンドルが内側に切れる事で自転車は曲がるんですね。
ハンドル周辺が重かったり、重心から遠い所が重い自転車の場合は、ハンドルが切れ始めると勢いがついてしまって、止まって欲しい所でハンドルが止まらず、切れ過ぎてしまうんです。
そうなると、ハンドルが切れ過ぎた分、乗り手が修正舵を入れると言った事が起こってしまいます。
カーブでの不安定感のほとんどが、この修正舵が原因と言っても過言ではありません。

「IVEsports」は「IVEstd」よりも細いタイヤを装備していますから、車体の傾きに対して、ハンドルが内側に切れようとする反応が敏感になっています。
「IVEstd」と同じ車体の重心位置のままでは、上記した事が原因で修正舵が多くなってしまい、「IVEstd」よりも不安定なハンドリングになってしまうんです。
Tyrellとしてはスポーツ性を高めたいとは言え、「乗り難くなる事」を許容できるはずもなく、タイヤサイズにマッチした重心位置になるよう、軽量なシートポストやハンドルポストに変更して、「IVEstd」よりも重心位置を低くする事で、「乗り易さ。」を担保しているんですよ。

如何ですか?
結構、細かい事やってるでしょ。

「そんなの分かるの?」ってお声もありそうですが、「IVE」のフレームが最適化された剛性を備えている事は、何度もご説明していますよね。
必要な剛性がきちんと備わっているフレームなら、車体の重心位置の変化や、重心位置が最適かそうで無いかは、明確に乗り手に伝えてきますよ。
グニャグニャのフレームや、ガッチガチで塊みたいなフレームだと、何が何だか分からないと思いますが・・・。

「IVEsports」は利便性だけが「IVEstd」と同じなのでは無く、「優しい乗り易さ。」もしっかりと有る「IVE」シリーズの一員なんですよ。

◆2022年モデルのIVEsportsについて

2022年モデルのIVEsportsが入荷してきました。
ちょっとご紹介させてください。

IVEsports
希望小売価格:¥203,500(税込)
フラットハンドル シマノSORA 1x9speed
タイヤ:32-355(18-1.25)



◆ベージュ&カーキ


◆ヘイジーブルー&グロスブラック


◆フォレストグリーンメタリック&マルーンメタリック


◆マルーンメタリック&グレイメタリック


◆マルーンメタリック&マットブラック

まだ入荷していないカラーで「黒鉄(くろがね)スパークマット&グロスブラック」と言うカラーが御座います。
画像でご紹介できない事が残念なのですが、FXαとかで採用されているカラーですのでイメージはしていただけますかね? 

黒鉄スパークマット以外は入荷済みです(黒鉄は2022年4月予定)。
気になる方は、Tyrellディーラー様にお問い合わせくださいね。 

◆カスタムについてのお願い

IVEはハンドルポストの太さがφ28.6なので、市販のハンドルステムで使えるものが多数あったり、リアハブが11速対応だったり、使用コンポーネントに専用品が一切なく一般市販品に交換出来たり・・・

ユーザー様が用途に合わせて、自由にカスタマイズしていただく事を想定して設計されています。
Tyrellでも「こんなカスタムしてみました。」と言ったご案内もしております。

とは言え、Tyrellが世の中にあるすべてのカスタムパーツをIVEに取り付けて、その安全性を検証する事は不可能です。
従いまして、Tyrellで販売している標準パーツやオプションパーツ以外のパーツを使用してカスタマイズされた場合は、Tyrellではその車体の安全性を保証する事が出来なくなってしまいます。

カスタマイズはあくまでもご自身の責任で実施されますようお願いしますね。

私もIVEをカスタマイズして、キャンプ&サイクリングに出かけたり、美味しいグルメ巡りに出かけたりしています。


ポジションを40mm前傾させ、ハンドルをオーバーサイズに変更。
1x11speedに変更、ブレーキもアップグレード、タイヤはイボイボのオフロードタイプです。
スピードは出せませんが、ソロキャンの装備を満載して、しまなみ海道でキャンプサイクリングとか出来てしまいます。
わざわざ自転車に道具を積んで出かける、不便なキャンプが面白かったりします。

◆寄り添う為に・・・

IVEは「寄り添う為の高性能」を一番大切にしているとお伝えしました。

それは、乗り手の苦手を補ってくれる優しい走行性能だったり、親しみ易くてちょうどイイスポーツ性だったり・・・。

フレームの性能から装備されるパーツに至るまで、全体のバランスを整える為に、細部に至るまで心配りがされている事をご案内いたしました。
あともう一つ、それだけではなくって、オーナー様の自由なサイクルライフに柔軟に寄り添えるカスタム性も大切にしています。

開発ストーリー IVE編は、今回で一区切り。
ここまでご覧いただいた方なら、IVEがTyrellファミリーの一員である事、唯一無二のemotionalを持っている事をご理解いただけると思っています!

是非、Tyrellディーラー様にお立ち寄り頂き、IVEをご体感くださいね。
ではでは、ありがとうございました!!